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2025年04月20日

金鶴泳 沢部論 沖縄随想19

 前回までの論を書いているちょうどその折、次の本が届き、読了した。
 沢部清「在日朝鮮人作家 金鶴泳の文学と思想」(dZERO2025年)
 沢部は、学部は異なるが、同じ大学の同学年で面識があったが、1981年に彼の職場があったパリで出会ったのを最後に、2024年に早逝するまで会うことはなかったし、このような著書を書いていることを私は全く知らなかった。彼のパートナーである沢部(信田)さよ子さんは、恵美子の大学院生時代の同級生ということもあって、時々お会いしていたし、最近も我が家を訪問してくださった。本書はその彼女からの贈呈本である。このカップルは、私と同年生だし、出身地も近いという縁がある。
 それにしても、本書が語る金鶴泳は、私が今論じているアイデンティティをめぐって共通する問題に絡んで小説執筆などの活動を展開している。金は、吃音と、家父長制色の濃い父親、在日朝鮮人であることをめぐってアイデンティティ模索を重ねており、それらについて本書は探究している。
 ということで、沖縄アイデンティティをめぐるこの連載に関係が深いので、ここで話題にするのだ。本書でも出てくるが、共通する問題が、在日朝鮮人と沖縄人との間に存在しており、本書の示唆するところが多いのだ。例えば、次の記述がある。
 在日二世の作家深沢夏衣にかかわって、「帰化して取得した日本国籍を前提にしながらも在日韓国人であることの民族性も維持したいと二つの国の狭間を何とか生きる道はないかと思案するのであった。」p168
 「今日、日本社会は多くの帰化人を受け入れているが、受け入れるにあたっては、これらの人々に日本文化への同化を迫っているのが、現実である。日本が、深沢夏衣の言うように、「帰化しても、少数民族のそれぞれの文化が尊重される形で共存する」多文化国家に生まれ変わるものであろうか。」p168~9
金が、作家活動をする初期のころにかかえていた、吃音、家父長制色の濃い父親、在日朝鮮人という「個人の特性」「関係」「民族」といった三つのレベルの問題は、沖縄関係者ももつことが多い。他にも、金は工学系大学院生で研究の世界にもかかわっている。それらのレベルで、伊波普猷を含むウチナーンチュのアイデンティティ問題ともからむ。余談になるが、私も10~20代に吃音に悩まされたことがある。

金鶴泳 沢部論 沖縄随想19

写真は本文にかかわりなく、キンレンカ(ナスタチウム)  食べられる花で、ハーブの仲間



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Posted by 浅野誠 at 20:05│Comments(0)沖縄
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