家事と職業・地域・自己維持管理・趣味などとの境界 連載「私の常識」24
前回書いたように、加齢にともない家事を多様にすすめていくようになるが、そうなると、どこまでが家事で、どこからが家事ではないか、という問いが広がってくる。
年金以外の所得がある70歳ごろまでは、職業と家事の二つを軸にして考えることが多かろうが、70代以降たいていの場合職業が消えていく。そして、家事に加えて、地域・自己維持管理・趣味といったことがそれ以前に増して大きな軸になっていく。
地域・自己維持管理・趣味の中の地域には、いろいろとある。地域組織での義務的な務め(輪番制の役員勤め、共同作業や行事への参加)、老人地域組織を含めて自主的な活動、防災の取り組みなどがある。さらに、来客対応と知人訪問、隣人との贈与・貸し借り・年賀状など挨拶交換など対人付き合い(社交)も視野に入れていいだろう。かつては、地域活動と家事とが溶け合って存在する面が多かったが、近年では地域活動がどんどん縮小してきた。そのために家族の縮小に合わせて「個人の孤立」が進行している。それだけに逆にコミュニティ復興をめざす活動が増えている。高齢者「見守り活動」は象徴的なものだろう。こうした活動は孤立傾向をもつ家族を補完支持する役割を果たす。介護保険も、こうした視野のなかでとらえていくことができよう。
対人つきあい(社交)でいうと、70歳代後半以降になると、付き合い全体の縮小のなかで近隣地域との関係が増えるわけではないとしても、その比重が高まっていく。
次に、自己維持管理について。これは加齢とともに身体上も精神上も衰えが進んでいくが、その進行速度を緩やかにして、自分自身を維持していく活動である。その活動は家事と密着しているものが多い。そのため、両者が融合していくともいえよう。そして、家族・地域の縮小の中で、誰かのために家事をすることが減っていき、自分自身のために家事をする比率が高まる。その結果として家事と自己の維持管理との融合が進んでいくともいえよう。一人暮らしの場合、それが鮮明だが、複数世帯にあっても、程度の差はあれ、共同維持管理の要素がみられる。高齢者カップルの場合には、相互維持管理という表現も使えよう。
趣味については、次回書こう。
写真は本文にかかわりなく、朝日 今日は旧暦の元日だ
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