小林武彦「なぜヒトだけが老いるのか」からヒントを得る 老真最中26
ここで脱線。最近読んだ生物学研究者の小林武彦「なぜヒトだけが老いるのか」(講談社2023年)からヒントを得た。
まず「野生の生き物に老化はそもそもないのです。」p53と指摘し、「人にとって老いは必要なものなのです。」p6、「老化はヒトの社会が作り出した現象と考えられます。」p118と書く。
「なるほど、なるほど」と納得する。私が考えてきたことと響き合うのだが、生物学の視点から指摘されると、深い意味を感じる。ヒトが作り出した老であるだけに、老をどのような時期として構想するのかが問われる。単純に、死に至る前の衰える時期という捉え方ではなく、老の積極的意味を考えることが求められる。
そして、「老」の時期に果たす役割を一層明確にしていく必要がある。
「たとえ数が増えようともシニアにはしっかりとそのお役目を果たしていただきたいのです。そのため、私はシニアを社会や組織から排除する一切の仕組みには問題があると思っています。」p126
不要な時期、役立たずの時期ではないのだ、「老」にふさわしい役目があるだけに、それにふさわしい場・機会を持つことが重要になる。ただし、「若い」時期とは異なるものだ。
著者は「老いは何かを失うわけではなく、「役割が変化する」ととらえることもできます。」p144と書く。老に至るまでにもっていた役割とは異なる役割を持つことが求められる。その「役割の変化」にかかわって次のように書く。
「「挑戦的・競争的」なライフスタイルから、「共有的・協調的」なものに変化していきます。自分のことを中心に考えていた若いときに比べて、ものの見方も広くなっていきます。」p140
「さらに年齢を重ね、(中略)いろいろなことに口を出したくなり、いい意味でお節介にもなっていくのです。ライフスタイルからすると、「共有的・協調的」から「公共的・奉仕的」になったと言うことができます。」p141
(次回に続く)
写真は、海岸散策路から見る太平洋
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